普段、表舞台に登場することのないバックステージで働く舞台スタッフの奮闘を、心弾む音楽に乗せて贈るミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』は、ラサール石井が原案・作詞・演出を手掛けた日本オリジナルのミュージカル。役者を中心に舞台裏の騒動が繰り広げられる“バックステージもの”とは異なり、本作は新人とベテランふたりの“舞台監督”をはじめ、裏方のスタッフを中心に展開する。オリジナルミュージカルとしての質の高さが評価され、第23回読売演劇大賞 演出家部門 優秀賞を受賞。2年の時を経て、ほぼ初演時のキャストによる再演が決定した。

今回は、劇場付雑用係・熊川義男役の中川晃教にインタビュー。『HEADS UP!』やミュージカル、自身のエンターテインメントに対する熱い思いを語ってもらった。
―まずは中川さんから見た『HEADS UP!』の魅力をお聞かせください。
この作品はやはり原案・作詞・演出のラサール石井さんの手腕がフルに発揮されていると思います。ラサール石井さんはどのように人を笑わせて、どのように心を揺さぶっていくかを具体的に緻密につくっていく方です。そしてジェットコースターに乗っているような感覚で次から次へと笑いの爆弾が投下されるので、すごく笑えるんです。けれどもその笑いが最後、涙に変わっていくところが、この作品の一番の魅力かなと思います。

素舞台からセットが立ち、お客様が入り、幕を開けて、バラして、また素舞台に戻すまで、そこで人がどのように命を懸け、魂を燃やして舞台の幕を開けているのかというところにスポットライトを当てたストーリーです。その着想は、ラサール石井さんにしか思い描けなかった人間ドラマ、ラサール石井さんにしか生み出すことができなかった作品なんだということが、関われば関わるほどよくわかってくるんです。だから『HEADS UP!』=ラサール石井さん自身、とも思えることがあります。
―ラサール石井さんの演出はどのような感じなのでしょうか?
俳優それぞれの個性や役との化学反応も含めて、役者に全信頼をおき委ねてくださっているので、俳優としてはすごく嬉しいです。その反面、何を狙っているのかが稽古で浮き彫りになり、自分の任されている役割を自覚するほど、厳しいものがはっきりと目の前に見えてくるので、決して甘い現場ではないと思います。ひとりでは生み出せないのが舞台で、幕が開いたらやはり全員で完走しないと感動につながらないので、そこがラサール石井さんの作品のコメディ性、センスの個性に直結してくることを実感しながら稽古をしています。
―前回は賞も受賞していらっしゃる作品です。
読売演劇大賞 演出家部門 優秀賞をいただいたことは、観てくれた方々が評価してくださって、自分たちがやっていることは間違っていなかったんだと背中を押してもらえるきっかけになりました。

お客様の目には見えない裏側ですが、関わる人たちの作品への思いや愛が、「この作品は愛情があるね」「みんな楽しそうだね」「みんな仲良さそうだね」という雰囲気となって作品の根幹と直結しています。各々がやるべきことをちゃんと全うした時に初めて、あの感動が生まれているんだなと実感できる現場です。
―現場での印象的なエピソードなどはありますか?
座長の哀川さんのプロ意識を垣間見ることができるだけでも現場にいて幸せですね。哀川さんは舞台というよりは、一世風靡やVシネなどで、日本のエンターテインメントの中でのブームを作った方。初めてご一緒して、その中でどういう在り方をするんだろう、どうやって作品と向き合うんだろうと気になっていたのですが、プロ意識の一面が見えて、こういう作り方もあるんだなとか、こういう存在もいるんだなと教えられた時に、哀川さんと一緒に仕事ができることに対して、この経験を今後に生かせるように頑張ろうと思えるだけでもすごく幸せです。
―具体的には哀川さんのどのようなところに感銘を受けましたか?
押し付けないところ、そして、相手を尊重するところです。
哀川さんは、相手に求めるのではなく、委ねることで物事を進めていくんです。座長として、その俳優が選んだ選択肢を僕たちの間で共有し合いながら引っ張っていってくださる。だからといって長年の経験だけを頼りにするわけでもないですし、親しみを感じさせながらも、演出家の求めること、演出家が導こうとしているところへしっかり応えていこうとする。もう唯一無二ですよね。真似しようと思ってもできないことだと思いますし、そうやって人の心が動いていく様を間近に見ていると、哀川さんじゃなければこの作品はここまでこなかったと思います。信頼できる方で憧れますし、居方、牽引の仕方などもすごく勉強になりました。
―中川さんが演じる役についてもお聞かせください。熊川は始めに舞台の素晴らしさを観客に伝えるという重要な役ですよね。
僕の演じる役・熊川は、人の思いや心、を伝えるような役割のような気がするんです。
別の言い方をすると、日常の中でも人の思いが人の心を動かす瞬間はあると思うのですが、熊川が体現しているこの思いはラサール石井さん自身とも重なる気がして、熊川という役は“ラサール石井さんの思い”ともとれるなと思いました。

同時に、熊川は役なんだけれども、僕の実体験というか、自分自身ともとれるんです。お客様に感動を届け、夢をお見せする。そして「ああ、今日観に来てよかった」「また明日からがんばろう」って思ってもらえる。これってエンターテインメントの要だと思うんです。スキル・経験値もすごく重要なんだけれども、この作品に携わる自分がどんなふうにこの作品と共に生きるのか、公演時間をどう生ききるか、ということまで含めて考えさせてくれるので、俳優個人としても、出会えてすごく幸せだなと思える作品です。
―様々な舞台にご出演経験のある中川さんにとっても、特別な作品。
役者にとって作品との出会いって本当に奇蹟だと思うんです。僕自身も色々な作品、現場を経験させていただきながら、ようやくそう思えるところに片足を突っ込んだくらいの感覚ですけれども。

今回の再演をきっかけにより幸せに感じるのは、今までも色々な現場でエンターテイナーとしての気づきを経験させていただきましたが、自分自身のエンターテイナーとしての気づき、エンターテインメントとはどういうものなのか、そして、そのエンターテインメントがちゃんとお客様に伝わったときの感動まで含めてこの作品にはあるんですよね。その気づきがあったときに、こういう作品、こういう役、こういうカンパニーと出会えることは役者としてすごく幸せなんだなって思いました。
―再演についてはどのようにお考えですか?
今回の再演で、初演ではうかがえなかった場所で公演ができることもこの作品の持っている魅力かなと思っていて、色々な劇場をまわることもすごく大切だと思うんです。東京はいい意味でもそうでない意味でも色々なものが集中していますから、恵まれているけれども、恵まれている分見えないこともある。でも、東京から一歩外に出て、初めてエンターテインメントに触れるお客様の空気感を目の当たりにしたときに、本当の意味で自分自身が試されると思うんです。

この作品に関わった以上、そういうことも含め、『HEADS UP!』が日本全国で感動をお届けできうる作品として成長していくために自分は何ができるか、ということはすごく考えています。特にミュージカルが熱い、流行り始めている今だからこそ、海外の輸入ミュージカルとは一味違う、日本人が作ったオリジナルのミュージカル『HEADS UP!』を知っていただきたいと思う気持ちは強くなりました。「『HEADS UP!』を観に来てください」って言えるのは、やっている自分自身が本当にそう思えるからだと思うんです。

そういう実感を持って関わる人たち全員が動き始めたときに、初めてブームになる、ひとつのムーブメントが生まれる。そのムーブメントが評価されたときに本物になっていくんだと思うんです。『HEADS UP!』はエンターテインメントのシーンが盛り上がっていく上で、役者、創る側にとっても、まさにターニングポイントと言えるような作品だと僕は思っています。
―この作品に対する中川さんの強い思いを感じます。同時に、エンターテイナーとしてのこだわりもすごく伝わってくるのですが、中川さんにとってエンターテインメントとは何でしょうか?
エンターテインメントは職人の仕事と同じ、専門の仕事だと思います。例えば家を作るとすると、家によってそれぞれ職人の技術って変わってくると思うんです。そのすべてを本当の意味で網羅できる人がいるとするなら、エンターテイナーというのはそういう人たちなんじゃないかなって。専門がそれぞれにあって、人を感動させ喜ばせるという意味では、どれも自分の中では一定のクオリティーを保っているけれども、「自分の一番はこれです」というものをしっかり持っていることが重要なのかなと。専門性を持っていることがその道のプロであり、エンターテインメント全体を盛り上げていくために実は一番必要なピースではないだろうかと最近思うようになりました。

僕は本物のエンターテイナーになりたくてここまでがんばることができましたが、そう思わせてくれたのはこれまで出会ってきた先輩方や仲間たちです。今の時代は、何が自分にとって必要なのか、何が自分にとって欠けているのかということを教えてくれる、気づかせてくれる仕事やチャンスは10年前と比べても増えてきていますし、この先エンターテインメントに関わっていく上で、本物というものを広い目で見ていきたいなとは思っています。同時に、そこでしっかりと自分の役割を果たせるように経験を積んでいきたいと思っています。

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